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●荒瀬光治(あらせ・みつじ)


組織が変だ! 社会が変だ!

 先日、ジャナ専(日本ジャーナリスト専門学校)OBのA君が事務所に遊びに来た。A君はコンピュータ販売会社に6年勤める営業マンだが、会社を辞めたいという。こんな時期にと思いつつも話を聞くと、彼に仕事を教えてくれた上司が辞め、その代わりに来たのが経営コンサルタントからの派遣で、仕事がやりづらいそうである。
 どこも同じである。編集関係でも制作の現場と、経営方針(経営感覚)のズレが、現場の思いとはうらはらに、われわれが見ると赤面するような粗悪品をやむなく読者に提供している例を、いたるところで話に聞く。もともとの編集現場では、部員になり10年20年と経験を積み、デスク(副編集長)となり編集長となり、その中で優秀な人材が、その上の管理職となっていた。仮にその管理職をB氏としよう。B氏の部員時代からの職人的経験が、あるいは編集に対する哲学が、その組織の蓄積された財産となり新人にも受け継がれる。それらが読者への安定した信頼ともなっていた。
 ところが、その組織の財産を、目前の利益という数字の問題だけで切り捨てて来ているのが今の出版・編集業界のような気がする。横滑りでやって来た元銀行マンの上司が、現場の意見も聞かず編集方針から誌面イメージまでも口出しし、現場は嫌気が差し、うっぷんがたまり、読者は離れてゆく。
 誤解しないでほしいが、すべてがすべてこのような組織ばかりではないし、すべての横滑りが良くないと言っているわけではない。10人足らずの小出版社で経営者も共に地道な編集をしている組織もある。また異業種からの転職であっても、編集部員やデスクなどとこまめなコミュニケーションをとりながら、新しい方向性を探っている管理職もいるものと思える。
 が、おしなべて性急過ぎはしまいか。仮に異業種からの管理職登用で、一時的に利益を上げても、5年、10年先を思うと継続的な組織維持にはつながらないと思える。本来は将来財産となりうる部員やデスクは定着しないし、古くからの読者も離れてしまって、毎回が新規創立操業ではないか。
 A君の例でも分かるように、このような一過的組織維持は何も編集・出版業界に限った問題ではないようである。現場の動きが見えない、あるいは見ようとしない一過的数字崇拝的な管理者が増えているのではなかろうか。一方では環境の時代、循環型社会などとの掛け声があるが、悲しいかな社会は逆方向に向かっているとしか思えないのだが。 (2004.9.13)



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