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●荒瀬光治(あらせ・みつじ)


視覚的なお行儀とプロの不在

某出版社から「新しい文芸誌」と銘打った見本誌が学校に送られてきた。
 「ひどい!」の一語につきる。版面はガタガタ、作品によって本文書体は違うは、行間が狭く読む意欲をなくすはで、正直学生作品の方がまだましである。同人誌ではない。定価をつけた出版社の発行物である。
 プロの不在である。編集者の仕事が、企画をし、集めた作品を印刷するだけなら、素人にも印刷費を工面しさえすれば、編集者になれる。そんな大きな誤解をしている編集者のなんと多いことか。改めて実感した。
 企画や中の作品に対して言っているのではない。企画は、「読者が選ぶ、読者参加型文芸誌」。面白い。作品は小説、エッセー、コミックなどさまざまだが、内容は門外漢として個人の趣味となってしまうので、どうでもよい(失礼!)。いや、どれも表現として内なる欲求を発散していて初々しい。
 問題は雑誌として、出版物としてのお行儀である。とても出版文化を継承しているとは思えない。「版面のガタガタ」は読者に不安を与える。「行間の狭さ」は同じ行を重複して読んだり、読む意欲を無くしてしまう。誌面の視覚的なお行儀を無視した、出版文化をないがしろにした、このようなお行儀の悪さは、読者に対して失礼だし、著者に対しても失礼きわまりない。
 プロの編集者、プロのデザイナー、プロの校正者、プロの印刷営業マンがひとりでもいれば、このようなデタラメな出版物はできなかったはずである。「これ、おかしいよ」と言ったはずである。
 プロの不在である。おそらくは担当編集者自身、「文芸誌」はおろか1冊の小説も読んだ経験が無いのではと思える。ま、そんな人物が「文芸誌」の編集者という職種を選ぶとも思えないのだが。???である。
 ともあれ、せっかくお送りいただいたので学生に紹介しよう。「反面教師」として。 (2005.11.8)


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