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●荒瀬光治(あらせ・みつじ)


校正というチェック作業

 昨年12月8日のみずほ証券の誤注文、新年5日にもカブドットコム証券が顧客に誤表示するなどの入力ミス、チェックミスが相次いでいる。
 みずほ証券の誤注文では、わずか数分で20億円の利益をあげた27歳の無職の男性がいると聞き、「なんじゃい。こりゃ!」と驚いてしまう。あまりに不平等だし、どこか狂気さえ感じる。平均的な生涯賃金が2〜3億円というから、彼は、たった数分で10人分の生涯賃金を得たことになる。まったくやりきれない気分である。
 ま、ボヤキはおいておこう。そういえば以前(2004年4月)、ヤフーショッピングで11万5000円のMacを2787円との表示ミスがあり、1億台以上の注文があったという記事を読んだことがある。仕事がコンピュータ化し、よりスピードが求められてはいるが、「いいのか、これで?」と考えずにはいられない。世のチェック機能、危機管理とは言わないまでも制作のシステムは、ちゃんと稼働しているのであろうか?
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 出版物制作では、校正という作業がある。文章と写真をDTP作業でページの形にしてプリントアウトしたものをゲラと呼ぶ。このゲラを、文章を書いたライター、担当編集者、デスク(副編集長)あるいは編集長が読み、チェックする。デザイナーも視覚的な面を中心にチェックする。予算に余裕がある場合はプロの校正者にも読んでもらう。この作業が文字校正であり、レイアウト校正である。
 1回目のゲラのチェックを初校、そのゲラの赤字を直した2回目を再校と呼ぶ。初校、再校、延べ5〜6人がチェックすることになる。直しが多い場合は三校(念校)をとることもある。
 印刷物や出版物の制作の歴史は、日本では100年以上になる。その間の多くの先人の試行錯誤の中から現在のようなシステムが考案された。基本的な認識は「人は間違うものである」を前提で組み立てられている。
 校正というチェック作業は、何も出版物に限らない。コンピュータやWeb上で読者やエンドユーザーに情報を提供する前には必ず必要な作業であろう。
 コンピュータを使った業務は、まだまだ数十年しか経ていない。今後、試行錯誤の中から新たなシステムが構築されて行くものと思える。歴史もあり、文化としても定着した、出版物の制作システムが参考になればとも思う。
 しかし出版における制作システムもデタラメになりつつある。困った時代である。(2006.1.6)

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