●荒瀬光治(あらせ・みつじ) ちゃんと編集の勉強をしようよ!
言っても、どうにもならないのかもしれないが、同業者として仕事をしているかぎり最低限の制作に関する知識は持ってもらいたいものである。
ここのところ編集者やライターの編集技術や知識の低下が、はなはだしい。先日も初校の赤字がfaxで送られてきたので、数十分間、黙々と赤字を訂正する(ま、赤字の多さもばかにならない。ロクに推敲もせずに、できた先から送ったに違いない訂正の多さである)。「むっ」としながらも何とか直し終わる。さて出力して再校を送ろうかというところで、faxが来る。次のページの赤字だろうと思って手に取ってみると、何と、たったいま直したばかりのページの赤字ではないか。しかも赤字の場所は違うし、さっきバッサリと削った部分にも赤字がある。 受話器を取る。編集部に電話する。「もし、もし。たったいま、25ページの赤字のfaxが来たんですが、これは何なんでしょうか」「あっ。今送ったのが校正の方の初校戻しで、さっき送ったのがライターからの赤字です」「あのですね。赤字ゲラは編集部で1本にまとめてもらわないと困るんですよ。実際、削った部分に赤字が入っていますし、内容的な判断はこちらでは責任もてませんよ」「はぁ。でも時間もありませんので、何とかならないでしょうか」「時間がある無いの問題じゃなくて、作業できるわけないでしょう。ともかく2枚のゲラを1枚にまとめてください」 イライラがつのる。結局、1枚にまとめられた赤字ゲラが来たのは翌日である。当然こちらは作業料金を上乗せでデザイン料は請求する。が、こんな編集部に限って予算が無い。まったく時間的にも精神的にも無駄である。DTP 作業をイメージできれば、このようなゲラ出しはしないはずである。が、おそらくは経験不足。イメージさえできないようである。 「版面」という単語が伝わらない。「天」「小口」「ノド」という誌面名称を知らない。先日も事務所の子が打合せに行き「明朝っぽいゴシックにしたい」と言われ、目が点になってしまったそうである。「もう、いいかげんにしろ」と叫びたくなってしまう。 新人を教育する予算や時間が無いようである。教育を担当する上司さえ不在なのかも知れない。はたまた分業化の弊害でもあろうが、それにしても制作システムが壊れてしまっている。 編集者、ライター、エディトリアル・デザイナー、DTPオペレーターなどさまざまな仕事が、雑誌作りや書籍制作にはあるが、プロとして仕事をするかぎりは最低限の制作システムと誌面名称程度は覚えてもらいたい。記事の企画ができ、多少の文章が書ければ編集者になれるとは思わないでもらいたい。特に編集者は書籍や雑誌制作の要となる仕事である。ライター、カメラマン、デザイナー、校正者などをちゃんと管理し、より良い出版物の形にするのが編集者の仕事である。 ここのところジャナ専の学生(たとえ1年生であっても)の方が、技術も知識もプロ意識も数倍上と思える。そんないい加減な職業編集者やフリーライターに多く出会う。編集者や出版希望の大学生よ。あと2年、日本ジャーナリスト専門学校で、学んでみなさい。特に編集者養成科ではバッチリと制作システムをご教授しよう。 (2006.3.7) 日本ジャーナリスト専門学校は2010年3月で閉校いたしました。 |