荒瀬光治
7——デジタル出版物の見せ方

 音楽業界では、レコードや CD などを媒体としていた楽曲の多くが、インターネットの住人となってしまいました。
 出版関連では、 アップルの iPad という電子書籍端末が発表され、先行のソニーのリーダーやアマゾンのキンドルとともに、いよいよ電子書籍の時代になるかと騒がれています。出版業界では一般社団法人「日本電子書籍出版社協会」 を2010 年 2 月に立ち上げ(予定)、対応をするようです。
 しかし、書籍・雑誌の出版物は、レコードや CD のような楽曲の単純な器ではありません。紙面に対する版面の大きさ、本文の書体や大きさ、字詰や行間などの本文フォーマット、そして構造明示子とよばれる柱や章・節のタイトルや中見出しの大きさや書体の扱い、つまり紙面の視覚的な見せ方も含めて書籍であり雑誌です。
 短絡的にテキスト(本文)の配信だけで出版物の電子書籍化が進んでいると言われると、どうもスッキリしないものが残ります。
 実際、かつてソニーから発売された電子書籍端末機 LIBRIé(リブリエ)の生産終了や、電子書籍配信サイトの Timebook Town のサービス終了などをみるに、まだまだ、出版物がインターネットの住人となるには、時が必要なようです。
 一般のホームページでは、ブラウザが欧文圏の出身のためか和文では読みづらいものも、まだまだ見かけます。文字デザインそのものの考え方が、行間ベタでも読めてしまう欧文と、ベタでは縦に読んでいいのか横に読んでいいのか混乱する和文では違います。
 時代の要請で、出版物のデジタル化はやむを得ません。今後、さまざまなメーカーからの端末機参入があるものと思います。それぞれが「読みやすさ」や視覚的処理も考慮した工夫がなされるものと思われます。
 出版業界もデジタル化に向けて、読みやすさの指標のようなものの提示も必要ではないでしょうか。たとえば字詰は15字から30字以内、行間は二分から二分四分程度のアキをとるなどという。現状では紙媒体においても各雑誌におまかせなところですが。  

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