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 日々のあれこれといえば、まず、なんといっても、食べ物のことじゃないでしょうか。朝起きて何を食べるか、昼はどうするか、そして夜は……といった具合に。
 むろん、それは、そのときどきに考え、その場の気分や成り行きで作ったり、食べる店を選んだりするだけのことなのだが……。それでも、いまではほぼ習慣化しているわが食生活の一端を、ご紹介しよう。
 朝は、ドンブリ一杯のサラダを作る。サラダボールといえば聞こえはいいのだが、あれはやはりドンブリだろう。といっても、天丼のドンブリなどよりは、直径が3センチぐらい大きく、丈が1.5センチぐらい低い陶器の器だ。
 材料は、基本的にあり合わせの野菜だが、食料を買うときには、常にそれが念頭にあるので、買い物も野菜が主になる。たとえば今日の場合……
 サラダ菜がなかったのでルッコラをベースに、グリーン・アスパラといんげんとオクラは茹でて、あとは、胡瓜に、マッシュルーム、トマト、万能ネギ、それに刻んだミョウガ、最後にちりめんじゃこを散らして、ドンブリはほぼ一杯。
 いつもは、安くて使いでのあるサラダ菜がベースで、なければ水菜やほうれん草。そんな葉物に加える緑野菜は、アスパラの代わりにブロッコリー、いんげんの代わりに絹さや、あるいはオクラ、マッシュルームの代わりにシメジや舞茸やエリンギといったキノコ類、と、そのときの気分で適当に選ぶ。ただ種類が多いほど、食べていて変化があっていい。だが、ここで強調したいのは、万能ネギはエライということだ。普通の長ネギじゃ、サラダには出来ない。それが、あの細い万能ネギを4、5センチぐらいの長さに切って入れると、それ自体、緑野菜の一つとして味わえると同時に、他の野菜の味を引き立てるのだ。むろん、万能ネギには、そばの薬味とか、炒め物とか、いろいろ使い道はあるしね。
 さて肝腎のドレッシングだが、バルサミコ(ワインビネガー)に醤油を加え、そこにオリーブ油、仕上げにジェノビエーゼ(バジル・ペースト)を少々加えてかき混ぜる、というのが、ワタシ流の基本パターン。気分によって、そこに柚子胡椒を少し入れて辛みをつけることもある。
 市販のドレッシングというのは、買ったことがない。マヨネーズはあまり好きではない。ただバルサミコを切らしたり、材料で和風味だなと思ったときは、お酢に塩、紹興酒、オリーブ油に、香りを付けるごま油といった組合せ、あるいは、お酢に味噌、砂糖少々に紹興酒にオリーブ油プラスごま油に七味唐辛子、といった配合になることある。どんな場合も、それぞれの量は適当。初めは味見していたが、いまではすべて目分量でやっている。
 とにかく、こうして自分で作ってみると、外で食べるサラダは、ほとんどの場合、材料的にも、味からいっても、値段の割に美味しくない。まして、パスタの添え物みたいについてくるサービスサラダなんて、話のほか!
 といったところで、これだけのものを作るのに大した時間がかかるわけじゃない。茹でたり炒めたりがあっても、せいぜい15分。
 なお、わたしの経験では、野菜にちりめんじゃこをまぶすというのは、結構いけます。それと、いまの季節なら、ミョウガを薄く切ったのを散らしたのもいい。また、これはわたしの感じだが、最近の胡瓜はあまり美味しくないので、前日に、両端を落として、何カ所か薄く皮をむいて、塩で揉んでラップにくるんでおくと、使うときにかすかに塩味が浸みて美味しくなる。
 とはいえ、買い物が出来ず、あるのは茄子とエリンギだけ、などということもある。そんなときは、迷わず、オリーブ油をたっぷり使って、この2つを炒め合わせる。味付けは、あらかじめ、味噌に紹興酒と砂糖とオリーブ油、それに香りをたてるためのゴマ油に七味を加え混ぜでおいたものを、野菜に火が回った頃合いに入れるのだ。ベーコンなどがあればいいが、野菜だけでも十分いける。もっとも、そんなときも万能ネギがあると、味が引き立つんだけどね。
 あるいは、新鮮なクレソンを見つけたときなどは、いっそ単純に、サラダ菜をひいたうえに、8等分にしたトマトをのせ、そこに一口大に切ったクレソンを山盛りにし、前記のバルサミコ・ベースのドレッシングをかけるだけにする。それだけでも美味いが、これに合鴨の薫製などを加えると、ビールやワインのつまみとしてもいけます。