このホームページを立ち上げた1999年は、印刷物制作環境は新旧入り乱れた時代でした。世はDTPだと言われながらも、特にページ印刷物の制作現場では、まだまだ「レイアウト指定」での印刷所入稿で、印刷所内部で電算写植やCTS(電子組版)で組版データの作成をお願いするシステムが、半分をしめていたのではないかと思われます。
 ただ表向きにはDTP関連の雑誌やソフトメーカーなどのイベントも盛んでしたし、また出版物の推定販売金額も1996年の2兆6,564億円(『2009年出版指標年報』出版科学研究所)をピークに落ち込みが心配され(残念ながら2009年には2兆円を割ることとなりました)、制作経費削減の検討の波とも重なった時期でした。新聞の求人欄にも「Macできる方」「要DTPスキル」などの求人が席巻するような状態でした。その数年後の求人に、逆に「アナログ指定できる方」の文言を見つけた時には、複雑な感情をもちました。
 DTPソフトもQuarkEXpress(クオークエクスプレス)が安定感を持ちはじめ、このままページ印刷物制作の定番ソフトとなるものとみられていました。
 現在ではDTPソフトはInDesign(インデザイン)が定番となり、作図ソフトにIllustrator(イラストレーター)、画像加工ソフトにPhotoshop(フォトショップ)。この3つがDTPの三種の神器などと呼ばれています。DTPソフトは他にEDICOLOR(エディカラー)、PageMaker(ページメーカー)などもあります。
 いまの時代に印刷物の制作を解説する場合、どうしてもDTPソフトの使い方を解説することになってしまいます。しかし、11年前と同様に、ここでは制作の基本を理解してもらいます。制作現場でのコミュニケーションの基本が「レイアウト指定紙」にはありますし、まだまだ「指定」をする環境は化石にはなりそうにはありません。(2010.8.6)
 参考のために、下に1999年の文言を掲載いたします。


1999年時の制作の前文
 ここでは技術的な面でのページ印刷物の制作を、解説します。
 DTPにおけるアプリケーションソフトの使い方は、他のホームページや市販のマニュアル本におまかせして、基本となるレイアウト指定入稿を中心に整理してみました。
 新聞の求人欄を見ますと、「DTP編集者募集」「Macデザイナー募集」とページ印刷物の制作現場がすべてDTP作業となってしまったような誤解を受けかねません。確かにプロダクションによっては100%DTP化のところもあるようです。しかしその逆のプロダクションもあるようです。
 これは予想に過ぎませんが、今現在、入稿前の
DTP化の作業は4 割程度ではないかと思います。あとの6 割は原稿用紙のマスメを埋め、レイアウト用紙に線を引いているのです。せいぜいワープロ打ちのフロッピー入稿ではないしょうか。レイアウト指定入稿のプロダクションや編集部は作業システムも安定していて、大声で社会に訴える必要もなければ、あわてて求人する必要もないのでしょう。
 ともあれこの章では、レイアウト指定入稿の技術と考え方を理解してもらいます。ページ印刷物制作において、DTPであろうが紙の上であろうが、共通に押さえなくてはならないところはあります。  最後は同じように読者が見るわけですから。


 
それではページ印刷物の制作に入ります。まずは紙について。

企画時の注意

●「判型」と「折り」
 雑誌や書籍の大きさのことを「判型」と呼びます。一般的な週刊誌がB5判、女性月刊誌はA4判変形です。
これらの判型の名称は印刷される元となる紙の大きさで決まります。
 規格の用紙にはA系列B系列があります。
A1判(仕上がり寸法)=594mm×841mm
B1判(仕上がり寸法)=728mm×1030mm
 A・B両系列とも縦・横の比率がルート2矩形と呼ばれ、用紙を2分したとき常に比率が変わらないように作られています。
下の図のようにA1の半分がA2、A2の半分がA3、そのまた半分がA4というようになっています。
判型 紙の大きさ


 A1(全)判の紙からはA4が16頁(片面8頁、本は両面印刷します)取れますが、使う印刷機によりA1(A判全紙)、A2(A判半裁)の紙で印刷します。この1度に印刷される頁が「折り」と呼ばれます。
 頁印刷物における総頁は、この「1折り」(8頁、16頁)の倍数が理想的な(無駄な紙が出ない)頁数となります。雑誌の頁建て(台割)を考えるときには注意が必要です。
 仮に8あるいは16頁で割って2頁余ったとします。
紙の無駄はもちろんですが、中綴じの雑誌の場合この2頁は糊付けとなり、時間も経費も余分にかかってしまいます。
 また、紙には繊維の流れによるがあります。頁物ではノドに対して紙の目が平行に走らないと開きがよくありません。本文紙には縦目、横目と2種類の紙が用意されていますが、表紙の紙選びには注意しましょう。不明な点は印刷所と、よく相談しましょう。

面付け 紙の目