荒瀬光治
3――「読みやすさ」を判断する条件

 実験などで、その組版が「読みやすい」といわれる条件は3つあります。
 1. 正確に速く読めること
 2. 内容を理解しやすいこと
 3. 疲労を感じないこと
です。
 私たちは大量の情報の中で生活しています。聞くもの、見るもの、そして読むものと、その取捨選択の力が情報リテラシーとして重要になります。出版物でみると 2008 年の新刊書籍の発行点数は 76,322 冊(『2009年出版指標年報』出版科学研究所)だそうです。単純に 365 日で割ってみますと1日 209 冊の新刊本が発行されているのです。これに雑誌の豊富な情報。インターネットでは個人、会社、政府を問わず世界中の情報が氾濫しています。
 このような情報社会の中で、1の「速く」は当然です。行を間違わずに速く読めることは、多くの情報に触れることができます。2 の「内容を理解しやすい」も当然ですね。後で説明しますが、多くはリーダビリティーの文字内容の問題が関係します。
 3の「疲労を感じないこと」は、雑誌などの読みやすさでは、あまり重要視されませんが、小説などの長文では1行の字詰が多すぎるものや、行間が狭くて読みづらくストレスを感じることはありませんか。また、チリもつもればで、新聞の1行12字などは実はかなりの疲労を感じる組版です。
 実験上での可読性の条件以外に、見たときのイメージの問題もあります。その頁を開いたとき文字が多過ぎて、「こりゃ読む気しないな」となってしまっては読書以前の問題です。読者の年齢の問題、記事内容の問題など、「その記事らしい」組版だと読者は安心して読む気を持てます。
 たとえば旅の情報誌では、多少行間が詰まり気味でも、それが情報量の多さと感じて購入します。小説が逆に情報誌のような組版では、購入する人はいないでしょう。また、60 代の方を対象にした雑誌に、本文が文庫本より小さな文字を使っては、その記事は読んでもらえません。眼球の成長途中の小学生向けの図書では特に注意が必要です。ゲームの攻略本などは、子どもは無理しても読んでしまうので、要注意です。  

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