印刷の基礎知識

 印刷は複製物を作るための工業的な手段です。
 狭義には刷ること、つまり平台や輪転の印刷機を稼働させることです。広義に取れば組版から製本までの工程を稼働・管理し、印刷物を納品することです。
 印刷方式には、活版印刷、グラビア印刷、オフセット印刷があります。制作システムの項で見た組版→製版→印刷→製本の工程の中で、活版印刷主流の時代(活版印刷では組版と製版は工程としては並列になります)には、組版の工程に重きが置かれていました。これは活版印刷で使用する活字は、そのままでも印刷が可能な版材ですし、印刷の歴史は、(一部の工芸的なブロック印刷を除けば)そのまま活字の歴史だった訳ですから。
 オフセット印刷が主流となった現在は、印刷文字も活字から清刷をとって版下を作っていた時代から、手動写植にかわり、電算写植(CTS)でデジタル文字となり、いまやそのデジタル文字が各家庭にあるようなパソコンで扱えるようになりました。
 当然、印刷所も企業ですから、内部に人とともに組版や製版設備をかかえるよりも、刷り以後の工程のみを業務にしたほうが効率が良いわけです。
 かつてページ印刷物の制作を説明する場合、編集までのソフトの面、組版以後のハード面と明確な線引きができました。ある意味で整理された良い時代でした。印刷所が刷りだけの工場となろうとするかぎり、その欠落部分は誰かが受け持たざるをえないのです。シンドイ時代ではありますが、面白くもあります。


 
それでは印刷の基礎的な説明をしましょう。
●オフセット印刷
オフセット印刷機  現在、紙への印刷の主流となっているのが、このオフセット印刷です。ドイツのゼネフェルダーが発明した石版印刷に端を発した平版印刷の一種です。
 水と油の反発現象を利用した印刷方式で、版から直接印刷せず、一度ゴムのブランケットに転写したものを紙に印刷するので、オフセット印刷といいます。印刷速度が速く、大部数、カラー印刷に適します。地図の等高線などの細
い線の印刷には、特に力を発揮しますが、やや力強さに欠けます。
 版材のPS版が、他の印刷方式の版材より安価なので、修正は経済的です。
 かつて文字は台紙版下から線画撮り、写真はアミ撮りして、集版という工程を経て製版フィルムを作成していましたが、今ではDTPデータから直接、アミ点の入ったフィルムや刷版を作ることが可能になりました。最近は製版フィルムを使わないで、直接刷版(PS版)を作るCTPというシステムが一般的になってきています。


 
●印刷までの流れ
版下・製版フィルム 写真の左下が、かつての組版の工程で作られた台紙版下です。組版の工程はこの台紙版下(文字校了台紙)を作るためのものでした。
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左上がポジの製版フィルムです。カラー印刷の場合は最終的に4枚のポジフィルムが作られます。これが製版の工程です。
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印刷の工程では、色校了となった製版フィルムから本刷り用の刷版(さっぱん=PS版)を作ります。この刷版を上の印刷機の版胴に巻き付けて、各色ごと印刷します。
 写真の右上にあるのが製版工程の色校正紙です。右下が断裁前の本刷り印刷物です。本刷りでは、全紙や半截の大きな紙で印刷するので、見本のビデオパッケージでは多面付け(同じものを何枚か貼りつける)という方法をとっています。


 
●カラー写真の印刷

カラー写真

 カラー印刷では、
  Y(イエロー) 黄●●●●●●
  M(マゼンタ) 赤●●●●●●
  C(シアン) 青●●●●●●
  BL(ブラック)墨●●●●●●
の4つの刷版(印刷する版)が作られます。この4色をプロセスの4色と呼びます。
 カラー写真原稿は、製版の工程でY、M、C、BLの4色に分けられ、それぞれアミ点の入ったネガフィルムが作られます。これが4色分解です。
 印刷の写真再現は単純です。黒いところ(その色の濃いところ)はアミ点が大きく、白いところはアミ点が小さく下の紙の白を出します。